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【演説の内容解説】プーチンがウクライナ併合を正当化する2つの論点

9月30日、ロシアはウクライナの東南部4州を併合したと宣言しました。予断を許さないロシア・ウクライナ情勢が一つの区切りを迎えています。日本の報道では、欧米を中心とするメディア寄りの報道がなされています。

しかし、今回の騒動におけるプーチン大統領の演説がそのまま報道されていたので、その論点をまとめました。

歴史背景や用語の解説も交えながらお伝えしますので、ロシア側の言い分を知りたい方は是非ご一読ください。

この記事の内容

  • 4州併合のロシア側の主張
  • プーチンが核攻撃について言及した内容

ロシア側の主張

本項では、ウクライナ東部4州併合のプーチン側の主張を論点ごとにまとめました。

論点①:4つの州はロシアに併合されたがっている

演説の前半は、ウクライナ東南部4州併合の正当性を主張しています。

プーチン大統領はドネツク人民共和国、ルハンスク人民共和国、ザポリージャ地方、ケルソン地方の4州は、自ら望んでロシアに併合されたがっていると主張しています。(「共和国」という表記は2014年のウクライナ紛争で独立したとするロシア側の呼び方であって、国際的にはウクライナの一部

4州併合の正当性の根拠となる論点を以下にまとめます。

4州の住民投票によりロシアへの併合が可決されている。

9月27日にドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ケルソンでロシアへの併合について現地の住民投票が実施された。ロシア派の通信社は99%以上の賛成を報じてますが、国際的には承認されていません。

4州はソ連時代は現ロシアの一部であった。

ウクライナはソ連崩壊以前はその構成国の一部でした。プーチン視点ではウクライナの独立を認めていません。

ウクライナ人とロシア人が民族的に同一のルーツを持つことを以下のように強調しています。

私たちの同胞、ウクライナの兄弟姉妹は、私たちの統一国家の一部であり、いわゆる西側の支配層が全人類のために準備していることをその目で見てきたのである。

引用元:E-wave Tokyo 翻訳者 青山貞一 東京都市大学名誉教

論点②:西側諸国の新植民地支配からの脱出

後半は西側諸国への批判を経て、ロシア側と対立している理由を明確化しています。

プーチンが言う西側諸国とは、米国を中心とした第二次世界大戦の戦勝国で発言権の強い国々のことを指すようです。特に米国に対して批判的であることが演説から伺えます。

西側諸国批判の根拠となる論点を以下にまとめます。

西側諸国はドルと技術力で新たな植民地支配を目論んでおり、米国に対して主権を放棄させようとしている

資本力を背景にして、アメリカの言いなりにしようとしているという意味です。演説の後半は一貫して欧米の支配からの解放を訴える内容になっています。

西側諸国はロシアの発展と文化を恐れているから攻撃しようとしている

文化的な対立構造があること示唆しています。冷戦時代の米ソを連想させます。

なかには以下のように、LGBTに対して批判的ともとれる箇所があります。ロシアは同性愛に不寛容な国であると言われていますが、今回の演説からも西側諸国との文化的な差異が見られます。

女性と男性の他に、ある種の性別があることを教え、性転換手術を受けさせたいのだろうか。これが私たちの国や子どもたちのために望むことなのだろうか。このようなことは、私たちには受け入れられない。

引用元:E-wave Tokyo 翻訳者 青山貞一 東京都市大学名誉教

西側諸国は「NATOを東に拡大しない」という約束を破った

北大西洋条約機構(NATO)は対ロシアを発端とする西側諸国の連合です。今回のウクライナ侵攻の原因の一端が、ウクライナのNATO加盟申請にあると言われています。NATOの加盟国は年々増加しており、ロシアからすれば大きな懸念事項でしょう。

米国はEUにロシアのエネルギーやその他の資源を完全に遮断するよう働きかけることで、欧州を脱工業化し、欧州市場を乗っ取ろうとしている

アメリカが同盟各国に対しロシアへの経済制裁をするよう圧力をかけていることを指します。

プーチンが核攻撃に言及

プーチン大統領が今回の演説で核について言及した一文を引用します。

アメリカは世界で唯一、核兵器を2回使用し、日本の広島と長崎を壊滅させた国である。

また、以下のように第二次世界大戦における米国の戦略を非難しています。

第二次世界大戦中、アメリカはイギリスとともに、ドレスデン、ハンブルク、ケルン、その他多くのドイツの都市を、軍事的必要性もないのに廃墟にした。

目的はただ一つ、日本への原爆投下と同じように、自国と世界を威嚇することであった。

(引用元:E-wave Tokyo 翻訳者 青山貞一 東京都市大学名誉教授)

9月21日の国内演説では「ロシア領土の保全への脅威に対しては、あらゆる武器を使ってでも防衛する。これは、はったりではない。」としており、各国の緊張感を煽っています。

まとめ

普段報道されることの少ない、ロシア(プーチン)側の主張とその論点をまとめてみました。

プーチンの主張は、「ウクライナ東部4州はロシアに入りたがっており、米国が支配権を握るのは間違っている」というものです。

演説本文はかなり長文で同種の内容が繰り返されるようなものですが、なかなか煽りが効いていて興味深いです。全文翻訳してあるサイトや同時通訳のYouTube動画があるので気になる方はチェックしてみてください。

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